懐石とは、禅の修行僧が冬の極寒の禅修行の折に、空腹を紛らせ暖を取るために、温めた石を布にくるんで、お腹に抱いた温石(オンジャク)のことです。
茶の湯の茶事の折に、亭主がふるまう一汁三菜の料理と禅寺の庫裡(調理場)で
作られた料理が同様の形式であるため、江戸時代には懐石料理として定着しました。
1907年(明治40年)京都生まれの辻嘉一は、私の敬愛する料理人です。
「懐石傳書」(昭和44年初版、婦人画報社全7巻、辻嘉一著)は、私の愛読書の
ひとつです。昭和34年版には、吉川英治が賛辞の序文を寄せています。
昭和20年、終戦復員帰還して、辻嘉一が直ぐに訪れた場所が、京都宇治の曹洞宗
高聖寺でした。寺の老僧から手渡されたのが、道元著「典座教訓」(テンゾキョウクン)。
庫裡で取り扱う食材は、人の目玉を扱うように、うやうやしく丁重に慎重に扱わなくてはいけないという修行の手引書です。
曹洞宗総本山永平寺において、私は修行をさせて頂いたこともあり、日本料理調理師として、庫裡で学ぶこともできました。
再び「懐石傳書」を読み返す喜びを、共有することが出来れば、幸いです。
「懐石傳書」全七巻
1.向付
2.御飯と味噌汁
3.椀盛
4.焼き物
5.煮たもの
6.八寸・口取
7.点心