日本刀の美

日本刀の美、を表現するのに、次のような文章があります。

「鎬造り、庵棟、身幅広く、腰反り、猪首切先。地文は、小板目詰み、地沸つき、乱れ映り、冴える。刃文は丁子揃い、互の目混じって、足・葉入り、匂い深く、

小沸つき、匂い口冴える。帽子は乱れ込み焼き詰めごころに掃きかける」

これは、国宝「光忠」(号「生駒光忠」)永青文庫 所管 鎌倉時代中期

本阿弥光徳が極めた刀です。 生駒讃岐守が所持していたので「生駒光忠」と

呼ばれています。

刀そのものには、部分部分に名称があります。鎬、棟、身幅、腰、切先(鋒)、

帽子、など。

刀の刃を光にかざしてみると、模様が浮き立って見えます。地文、刃文に分けて、

その模様のことを、丁子、互の目、足、葉、などと呼びます。

さらに、とことん美しさを極めて、「映り立つ」「小沸つく」「匂い深く」などと

表現します。

視覚を、嗅覚の言葉「匂い」で表すところは、平安王朝以来の言葉の雅(ミヤビ)で

あり、日本人らしい繊細な感性を感じます。

“ The Jimon is very fine ko-itame with ji-nie, and midare-utsuri appears on bright jigane. The Hamon consists of a row of flowery choji with gunome. Plenty of Ashi  and Yo are observed. And the Hamon has wide Nioi with some ko-Nie brightly.

The Boshi enters in Midare. The tip of the Boshi is a swipe-like pattern without returen.”

地文、刃文、帽子、の美の表現は、翻訳すると、むしろ英語の方が分かりやすい

ですね。

日本語でありながら、ほとんど分からない、日本刀の賛美については、その独特な表現について、学ばなければなりません。

「五箇伝」

江戸時代以降、称されるようになった「五箇伝」とは、多くの名工を排出した

五か所の刀の生産地であり、それぞれ独自の鍛錬法や特色ある刀の姿を持っています。

九州育ちの私は、やはり、九州の刀工に興味を抱くので、五箇伝のほかに、九州物

を中心に取り上げてみます。