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和の精神世界7

2020年5月17日
佐藤 一郎(Ichiro Sato)
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和の精神世界に於ける巫女の存在

巫女について語ろうとするならば、まず、古事記の「天の岩屋戸」の話から始めなければなりません。天照大御神の弟 須佐之男命が天津罪(あまつつみ)の七つの大罪(アハナチ・ミゾウメ・ヒハナチ・シキマキ・クシサシ・イキハギサカハギ・クソヘ)を犯したために、アマテラスは恐れを抱いて天の岩屋戸に隠れてしまわれた。それで「高天の原」も地上の「葦原の中つ国」も真っ暗になってしまいました。そこで、知恵の神オモヒカネ(思金命)の脚本演出監督による大芝居が行われました。まず祭具(鏡、勾玉など)を準備して、アメノウズメが伏せた桶の上に立ち、足を踏み鳴らして踊り始めました。やがて彼女は神憑りして、ほぼ全裸になって官能的に踊ると、あまりの素晴らしさに男の神々は、喜びの声を上げて満ち足りた気持ちで、その踊りを楽しみました。その歓声が気になってアマテラスが少し戸を開けたところを、アメノタヂカラヲが彼女の手をつかんで岩屋の外に引き出し、光が世を照らすことになりました。原文は、出来事を畳みかけるように、生き生きと表現しており、音声による語りであることが分かります。

閑話1

「天津罪」とは、律令政治の基本法として、718年藤原不比等が編纂した「養老律令」の施行細則として、927年に藤原忠平が編集した全50巻のうち巻8に収められている「祝詞」に出ています。アハナチは畔を壊して田の水を流失させること。ミゾウメは田に水を引く溝を埋めること。ヒハナチは池より水を引く樋を取り外すこと。シキマキは撒いた種子の上に更に種子を撒き稲を過密状態にして実を実らせないこと。クシサシは水田に串をたくさん刺して、稲の世話を出来ないようにすること。イキハギサカハギは、してはいけない剥ぎ方で動物の皮を剥ぐこと(そうして皮を剥がれた馬を機織屋の天井から投げ入れて織女を死なせてしまった)。クソヘは神殿に糞をまき散らすこと。結局これは何を述べているかと言えば、稲作と機織りへの妨害行為と皇室儀礼への冒涜は、天皇家に対する大罪である、ということです。動物の皮を剥いでいた狩猟生活の縄文時代人と渡来人指導で稲作を始めた弥生時代人との相克を表しているのでしょう。それに対して「国津罪」というのは、殺人・障害・近親相姦などの原初的な罪のことです。とは言え、アマテラスとスサノオは姉弟の関係であり、近親相姦の禁忌性を潜在させている、と考えられます。

閑話2

「古事記」のほとんどすべての現代語訳では、天の岩屋戸のところで、アメノウズメが絶頂の踊りを見せると、「八百万の神、共にわらひき」(神々は、一緒に声を出して笑った)と原典「咲」を「わらひ」と読み、声に出して笑うと訳しています。柳田国男は「わらひ」は声を出し「ゑみ」(現代でも微笑みとして使う)は声を出さない、と述べています。「わらひ」を検証してみると、軽蔑の意味が含まれていますが「ゑみ」は満足な喜びを示しています。ですから、神々がここで笑うのはどうも不自然だとかねてより考えていました。アメノウズメは大神アマテラスと直接対話出来る側近の巫女であり、神懸るほどの熱演を誇りをもって演じているのであり、スケベじじいの神々(神の中には女神も含まれますが)が女の裸を見て大笑いしているとは、とても思えませんでした。蔑視ではなく、喜びと満ち足りた気持ちで歓声をあげる、という表現はないものか、と探してみると「続日本紀」の中に称徳天皇の発令する「宣命」の言葉があり「喜びに声を発する」表現が見つかりました。「ゑらく」という言葉です。「神々が声を発して笑った」のではなく「神々は声を上げて喜んだ」と訳すと自然な感じがします。「咲」を「ゑらく」と読みましょう。また、万葉集の大伴家持の歌には「豊明」(とよのあかり)という酒宴で「ゑらゑらに」(喜び興じる)という言葉があります。

天孫降臨で、アマテラスの孫にあたるニニギノミコトが降臨される時に、アメノウズメが国つ神(地上の神)のサルタビコに対面させたので、ニニギノミコトからアメノウズメの一族に「猿目君」(サルメノキミ)という名をもらいました。サルメノキミは芸能の巫女であり、この子孫が稗田阿礼です。

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佐藤 一郎(Ichiro Sato)

早稲田大学大学院(心理学専攻)
メルボルン大学大学院(言語学専攻)
文学修士。大学教員を経て、株式会社 BrainTrust 設立。
代表取締役現在に至る。

和の精神世界6
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